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著者98

年末よく見かける「1998年重大事件ベスト〜」的な企画。様々な分野の自分にとっての大きな出来事を紹介していく。…予定が「聖書」の記事だけで大きな幅を占めてしまったので、来週には「著者読書」などという題名に変わっているかも。

読書98

著名著者出版社価格
1小説「聖書」旧約編
小説「聖書」新約編
著:ウォルター・ワンゲリン
訳:仲村明子
徳間書店\1900(旧約)
\1500(新約)
2平気でうそをつく人たち著:M・スコット・ペック
訳:森英明
草思社\2200
3戦争論小林よしのり幻冬舎\1500

小説「聖書」旧約編 / 小説「聖書」新約編

 聖書がこれほど楽しいとは。誤解していました。登下校の電車の時間を利用して一気に読みました。
 これがきっかけで教会で洗礼を受けるとか毎週ミサに出席するなどということは一切ありません。聖書を読み切り且つ感動したことと、ユダヤ教・キリスト教に入ることとは全く別次元ですから。純粋な小説として楽しめたのだから。

旧約編
 「旧約編」はアブラハム・イサク・ヤコブ・ヨセフの時代〜出エジプト・カナン侵入〜ダビデ王・ソロモン王の時代〜南北分裂〜両国滅亡・バビロン捕囚〜ネヘミアによるエルサレムの城壁完成まで。初めて目にする人物も多いが、所々で聞いたことのある名前や世界史で習った国家・人物が登場し非常に読みやすい。ネブカドネザル2世とかね。

 宗教に興味を持たず逆に(オウムの事件などで)不信感を抱きつつ読んだのが楽しさ倍増の原因だったかも。神なんて信じないぞ、そんな気持ちでこれを読むと、神様も人間味に溢れていて面白い奴だったり、やり手の策士だったりする。それでいて結構自分勝手。自分に対し罪を犯した(契約に対する債務不履行)民に対し、寛大に許したり徹底的に罰を与えたり。機嫌で行動が変わるのかな?勿論きちんと読めばそんなことはないのだけれど、楽しければいいのさ、小説だもの。

 序盤のクライマックスはモーセの出エジプトの場面。海を割ったり神と契約したり(これが「旧約」)名場面も多い。

 サウル〜ダビデ〜ソロモンの3代を描いた中盤は最高。サムソン(超兄貴のあいつ)とデリラの話は楽しいし。でも最大の読みどころは何と言ってもダビデの一生!!ヨナタンとの友情物語、ゴリアト(別の表記の仕方「ゴリアテ」、といえばピンとくる人も多いだろう)との闘い、サウル王(サウルの人生もすさまじい。とり憑いた悪霊との闘いは壮絶である)との確執、王国の全盛、今際の場面…。

 ダビデ・ソロモンの全盛期を過ぎると王国は衰退の一途をたどる。人間の醜さが大爆発である。預言者たちの生き様は悲愴。神との契約を忘れた民の不遇の歴史。絶望と切望の中エズラが人々に読み上げる天地創造は感動的である。あまりにもにくい演出に完璧に打ちのめされた。

 旧約編だけでもいいから読め!!
新約編
 新約編はキリストの一生を描く。キリスト、現在の価値観や常識から見るとほとんど精神異常者である。もし彼が今の時代に現れたら病院へ直行もしくはオウムみたいな宗教団体作ってマスコミの視聴率稼ぎの格好の的になりそう。逆に麻原がキリストの時代に生まれていれば今頃世界3大宗教になっていたかも。麻原の教義は博愛やら正義やらとはかけ離れているし信仰を自分のために利用しているに過ぎないので、そんなことはありえないが。

 新約編も何処かで聞いたことのある名前目白押し。ヨハネとか12使徒とかロンギヌスとか。有名な天使も何体か登場した。

 徹底的に悪人だと思いこんでいたユダが決してそんなことはなかったのが衝撃的だったりするが、旧約編よりは面白味に欠けた。ある程度常識で知っている挿話が多かったため新鮮味が少なかったためだろう。

 個人的には新約編を読んで、記述が少なかったヨハネさんについてもっと詳しく知りたくなった。「ヨハネ黙示録」色々なところで(主に漫画でお手軽に雰囲気を盛り上げる道具として)引用されているから。

 西欧文化の理解を深めるためにはその根底である聖書に触れることが必須である。でも「本物」を読むのはプロ(文学部の学生とかね)でも至難を極める。そこで小説「聖書」。小説だと侮ってはいけない。本書を読破してから他の聖書に関する書籍を読んでみると、ほとんど理解できる。話題に上る事件や引用がすでに知識として身に付いている。これには本当に驚いた。何だか快感。今はそんな心地よさのためだけに聖書関連書籍を読み漁っていたりする。
(1998/12/21)

平気でうそをつく人たち

戦争論

小説「聖書」の紹介に大量の時間と場所を裂いてしまったので、ここは次回以降。

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