CD REVIEW(邦楽編)
アルバム短評集その2
Phase (Surface)
「B'zから重要な部分を全部吸い取って上っ面(surface)だけ残したようなユニット」そう評する予定だった。それがなかなかどうしてBGMに垂れ流して聞くつもりだったけどついつい歌詞カードを見ながら全部聴いてしまった。
音楽。自らはユニットの形態をとり、プロのセッション・ミュージシャンを起用する形式。へたくそなバンドの演奏で気が滅入ることが多い昨今(それが「男は外国ロック、女は日本ポップ」と聞き分けている理由の一つ)、やはりこの形態の音楽は安心して聞ける。足を引っ張るかと思いきや、メンバーのギタリストも悪くない。むしろ編曲で高い音楽力を見せつけられる。椎名もいい男をかこったもんだ。一辺倒で疲れたけど良質だと思った。
そして相変わらず神経を逆なでする椎名某の歌詞。今回敢えて挑戦したわけだが、やっぱり心がぎりぎりする。閉じた心を無理矢理こじ開けて頭をつっこみ、あんたにだけは言われたくないような事をバシバシズバズバ言った挙げ句に「ねぇそうでしょう?ねえ?」である。反論できないからなおさら苛立つ。「××××(伏せ字)」と元も子もないことを喚いて物を投げつける。ニヤリとしてヤツは引き返す。そんな心象を描きながら長い43分を過ごすわけだ。たまにはいいかもね。
うた き (小谷美沙子)
すごい。凄すぎる。葉加瀬と康恵が惜しげもなく大絶賛していた意味がここで全てわかる。レンタルで借りたあと自分で買ってしまったほどだ。まいった、「すごい」以外の言葉が浮かばない。見た目はどこにでもいるような目立たない人がここまでやるか。Favorit BlueやPamerah(スペル自信なし)のような連中には一生かかってもたどり着けない境地だ。股を広げて匂いを散布し手玉に取るのではなく自ら「生けどりの花」となるという。「母の日」もぞくぞくする歌詞だ。
正直な人 (松崎なお)
ううむこれも良い。最近の単独で頑張っているタイプの女性歌手は個性的なのが多く威勢がよいぞ。「単独で頑張っている」は、作詞作曲を自ら行い、場合によっては編曲や楽器演奏も手がける人のこと。その反対が大物プロデューサに操られているタイプ、小室傘下の歌手たちとかね。別ベクトルには職人的シンガーもいるな、朝本浩文とUAの関係が好例だ。
個性的な歌声、どこか屈折した強烈なオーラ、激しい感情、ひねくれたユーモア、はっとする言葉、んで表現者としての強い姿勢(全部を裏返すと藤子になる)。アルバム全体の濃度は椎名林檎より充実している。かなりおすすめだ。
DIVE (坂本真綾)
聞けば聞くほど底知れぬ心地よさにどっぷり浸ってしまう。まるで履き慣れた靴のようだ。「Grapefruit」を聴いた当初は「広末某を少しうまくした感じ」などと曰っていたが今となっては唯一無二の存在に感じる。菅野もいい娘を手に入れたものだ。これ以上ない最高の熱演を聴かせてくれる。
その後の調査でやっぱりA/Gに深く関係しているそうだ。もうどうでもよいことだが。興味を持つきっかけとなった曲は何某アニメの主題歌「奇跡の海」だということが判明。ここでも親指を立ててグーッとしか言えないような見事な歌声を披露している。出所が違法の薫り漂うmp3だということは内緒である。
ブルー・ルーム (Kryzler & Kompany)
「2枚のファイナル・アルバム」の一翼。こちらは3人のアコースティックによる演奏が収められている。
考えてみれば当たり前である。芸大出身の3人がアコースティックでクラシックの楽曲を演奏すればクラシックその物に聞こえるのは。クラシックの伝統的な解釈を基調に彼ら独自の仕様での演奏が秀逸である(誉めすぎだ)。単なるクラシック演奏では意味がないのだから。その辺りは流石プロ。
ここでも際立つのはポピュラー音楽のアレンジとオリジナル曲。電気ではない演奏が、彼らの音楽の本質を暴き出している。To Love You Moreが絶品。
そして最も興奮したのは、ブックレットに掲載されていた彼らの履歴!!!中学生の時、少年少女が様々な場所で逆立ちしている不条理なCMがあって、そこにBGMとして流れていたのがモルダウのアレンジ。わあ、ほしいなあ、と思っていた。そしてブックレットには「C/W「モルダウ」(東京建物CF曲)」との記述!!!なんという巡り合わせ。
01 (坂本美雨)
親父と一緒にレンタル。
娘の歌声はおなじ龍一監督の中谷みきに酷似。曲は。これが結構よい。娘はアンサンブルの一楽器として上手くとけ込んでいて好印象。手元の紙を見ると、5曲中3曲、Luna Sea("Luner Sea"by camelではない)のSugizoが作曲していた。さすがは龍一(くどいが断じて河村ではない)、ふむふむ、よいぞ、よいぞ、と聴いていたから少々面を喰らった。
Luna Seaの面子は、河村と真矢以外は皆優秀な音楽家だったことが各々のソロ活動で明らかになった。何故か椎名某とデュオをやった男はドラマーとして上手いのでまあ許すとすると、Luna Seaの「諸悪の根元」は河村その人である。落下する太陽男も、河村ポップのリズムでは不本意極まりないだろうに。そんな意味ではスピッツのドラマーが
最も不相応。彼の軽快で心地よいドラミングはマサムネ統制下の一辺倒なうんざりポップではもったいなさすぎる。
話がそれたけど、このアルバムは朝本的ポップとは違う次元で心地よく、BGMに適しているので、以降も平均以上の頻度でプレーヤーにぶちこむだろう。
Merry Christmas Mr.Lawrence (坂本龍一)
これで「なんとなく聴きたいと長い間思い続けているサントラ」は久石譲の「タスマニア物語」だけとなった。とりあえず表題曲が聴けただけで満足。サントラ全体としては「ラスト・エンペラー」の方が良い。
i (小谷美沙子)
葉加瀬つながりで「シャコンヌ」と同時に借りる。葉加瀬氏と佐藤嬢の評価がかつて無いほど高かったから。でもよく置いてあったなあ。
高い歌唱力と独特の歌い回し、強い歌詞、典型の中に確かに輝く個性、俺のピアノ好きでプラス因子は多いが、心を打たれるようなことはなかった。まだまだ発展途上?なので仕方がないのだろうか。音そのものは全体通してごく普通。
経験知識不足で伊藤政則張りに断言は出来ないが、ビョークのような音楽性を持つ音楽家だと思った。K&Kの音楽を聴いて葉加瀬氏の発言にかなりの説得力と信頼を感じるようになったので、1999/03/25発売の最新アルバムは是非聴きたい。2900円は財布に厳しいので、レンタルで見つかれば。
シャコンヌ (Kryzler & Kompany)
音楽とは関係のない様々な遠回りと紆余曲折の末に「再会を果たした」グループ。本当は「CD評」に独立させたいのだけれど、歌詞カードをコピーせずに返却してしまい、正式な情報(infomation)が分からないので短評に格下げ。いずれ某氏に情報は提供してもらおう。
'95年に発表された、K&Kとしては新しいアルバム。これを選んだ理由はただ一つ「交響曲第5Burn」を聴きたいから。一年強前にテレビでにょろっと見かけ、強烈に脳裏(と耳の裏?)に焼き付いたのが「ヴァイオリニストが奏でるDeep PurpleのBurn」。長い年月期待と妄想を膨らませ美化されたためもあって、いまいち。ベートーヴェンを題材にするのがありがちだったこともあろう。
全体として。これがバイオリンでなく、しょぼいギターだったら(あくまでも先入観で言うが)何のことはないフュージョンだろう。先日高田嬢とご成婚された葉加瀬の奏でるバイオリンの圧倒的な表現力に脱帽。
別の観点。クラシックの編曲より、近年の楽曲の編曲とオリジナル曲の方がずっと良い。簡単に言うと、クラシックの名曲は原曲が完璧であり、いくら編曲しても落ちるしかないから。詳しくは独立したときに。こういう形態のCDではむしろ見劣りしがちなオリジナル曲が優れているのは流石である。伊達に佐藤康恵と司会をやっていない。
クラシック、現代曲、オリジナル曲が見事に融合したアルバムの中で白眉はホルストの組曲「惑星」作品32の「木星」を題材にした「ジュピター」。中学生の時、オリジナルの管弦楽曲を初めて聴いたときに匹敵する衝撃だった。逆に「交響曲第5Burn」の評価は下がる一方。所詮コマーシャルだったのか。しかし「ジュピター」には大いなる謎が。
ロング・バケーション (日向大介)
藤子提供した曲で真っ向から小室と対峙、小室には一生かかっても創ることの出来ない至宝の旋律を見せつけた日向(「ひゅうが」ではない。でも変換は「ひゅうが」で一発)大介。こうなれば他の作品も聴いてみたくなるのが身上。早速数カ月後に借りてみる。
まあまあ。以上。
確かに来たい過剰だった上、歌詞カードも入っていなかったので歌を歌っているのが誰か分からなかったし、当然ドラマは見ていないし、純粋に音楽として聴く状況に追い込まれたのが悪因。曲名も分からなくては不要に興も醒めてしまう。
Evergreen (My Little Lover)
こういう若者一般向けのCDは一瞬で持ち去られ永久に貸し出し中になる図書館で発見。他に借りるものがなかったので。
右か左かと言えば木根尚人に分類される音で、BGMに適。「最適」でないが。
大分成功を収め経済的に余裕が出、やっと自分の好きな音楽に専念と結成しただろうマイラバだけれど、好きなことをやっても聴いて貰えなければ意味がない。ただの音楽オタク(つまり俺)ではいけないわけで、商業的で長時間の使用に耐えない曲「Hello, Agein」1曲が汚点。これがなければ「最適」級。どちらにしても全体的に心地よいポップに満たされお気に入りである。デッキにぶち込む回数も標準以上だろう(当社比)。
衝撃度では「Man & Woman」、曲の良さでは「白いカイト」がクリティカル級。歌詞はどうでもよい。
グループについても難点か言及したいが、将来「アーティスト酷評」の続編を編纂することになったときに。
邦楽編