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「KC的戯言」第一集

サーカス(1999/03/19)

 「諸悪の根元」開設から10カ月目にしてようやく本来の(実は建て前だけどクリムゾンとは次元の違う話)目的であるクリムゾンの記事を本格的に取り組み始め、改めてこのバンドの歴史を振り返った。「スラック」までのアルバムを一通(2つ抜けているけど)り聴き直し思うことは、「スラック」「B’ブーム」つまり'94, '95年の「現行」クリムゾンは寂しいな、ということ。「宮殿」から「ディシプリン」その他沢山のライブアルバムはどれも素晴らしくおそらく永遠に聴き続けるだろうが、この2作は聴くほどに不満がつのってゆく。

 まこと身勝手な言い方だが、クリムゾンを好きでいることに誇りを持っている者としては、新作が良くないのは自己存続に関わる深刻な問題なのだ。「良くない」というのも自分の判断であって、「傑作」と評価する意見も多く、一個人が責任を音楽家に負わすのは何かおかしいけれど、実際「誇り」の根拠の一つが揺らいでいるのだから仕方がない。

 クリムゾンは他とはひと味違うぜ、と言える「根拠の一つ」は結成30年を迎えた大御所(クリムゾンの知名度についてはまた考察の価値がありそうなので現在調査中)としては極めて特殊な音楽活動を行っている、という点なわけ。(過去も昔もしっかり聴いたわけではないし、伝聞も多分に含まれるけれど)他の大物バンドの印象は「でぶでよろよろの太陽(Fat old sun)」。今のピンク・フロイド、EL&P、イエスなどは聴きたいとは思わないし(この辺りは一般の評価も低い)、今のエアロスミスやらローリング・ストーンズだとかディープ・パープルだとかもたぶんダメ。その点クリムゾンは違うぜ。まだまだ進化へ意欲をむき出しにし、常に新境地を目指し、本当の意味での「プログレッシヴ」な姿勢を貫き通しているのは唯一クリムゾンだけだ、そう誇りたいのだ。実際そんな記事を読むことは結構多いのだけれど、どうも素直に喜べない。

 そんなわけで、「PROJEKcT」と銘打って、バンドが集結できないならバラバラでもよいから、とにかくライブしよう、という現在の姿勢の方がクリムゾン本体の活動再開を望む声の中、逆に嬉しいのだ。50を越えるおっさんが地道にライブを精力的に行っているんだ、お前の所のバンドはどうだ?え?10年ぶりの活動再開だって?大変だねえ、お前も。君の所は(ジェフ・ベック?)。は?デビューもしてCDも沢山売って、それから初ライブだって?ははは、人間が神を創造したようなおかしな話だね(ブリグリ?)。

 そんな虚しい問答が繰り返される中でのライブ・ベスト「サーカス」の発表。Disc Unionで買うとポスターが付いたらしい、何てこったい。それはさておき。今回収録された音源の中で驚いたのはアイランズ期のライブではなく、'96年メキシコ・シティでのライブ音源だ。「B’ブーム」「スラック」から格段の進歩を遂げていた。数多くのライブを重ねようやくダブルトリオが生きてきた。どうしても「増えた手」が余っていた昔の楽曲もすっかり生まれ変わっていた。1.8トリオ位まではまで到達したようだ。具体的なことは本編で語るとして、失いかけていた誇りを取り戻せる絶妙な作品である。もしかしたら、フリップ総帥はそのような事まで読んでいたのかもしれないと思う。「Young Persons' Guide」とは言いがたい選曲もあるが、とにかく自信を持って進められそうだ。未来に期待がもてる一品。

読売新聞夕刊平成十一年三月十一日(1999/03/13)

英国ロックの雄、キング・クリムゾンが、別動体を組織して活発に活動している。総勢六人のメンバーが、組み合わせを変え、三、四人編成の四組のプロジェクトを作り、ライブやCD制作に取り組んでいるのだ。全プロジェクトに名を連ねるリーダーでギタリストのロバート・フリップに聞いた。
 どこで?彼、来日しているの?何のため?ポニーキャニオンと交渉?それとも例の裁判?来日したならArch Angelは当然取材に来ただろうから、次号は期待できるかも。

 とにかく驚いた。広瀬こーみやら古内とーこやらどうしようもない連中のインタビューを毎週掲載している「芸能」の欄にロバート・フリップである。椎名林檎やら松崎なおやら、もっとこの場に相応しい人は山のようにいる筈なのに。世間でのクリムソンとフリップの知名度はどれくらいなのだろう?少し疑問に思う。

「いずれも即興演奏を基本にした。それはミュージシャンの本質が明快に表れ、僕にとって音楽の出発点であもる。様々な形態で即興演奏を重ねることは、クリムゾンの次の作品の糧になるだろう」
 一連のプロジェクトものに付き合っていると、プロジェクト・ゼロことクリムゾン本体の新作への期待は高まるばかりである。具体的に何を望むのかは自分でも漠然としていて分からないが、これだけ修行を積めば想像を絶する音を聞けるに違いない・・・。が、「スラック」が一体どのように進化するのかは予想不可能だ。「スラック」を聴いていると、今はもう限界に達しているのでは?と不安な気持ちになる。プロジェクト4が6月にCDを出すらしいので、とりあえずそちらに期待しよう。

「僕が出したアイデアは他のメンバーから否定されてしまった。さらに新作制作よりライブを数多くこなしたいという意見も出た。しかし、家庭を持ち、バンド外の活動もしているメンバー全員が終結し、長期間ツアーに出るのは難しい。それなら、集まれるメンバーだけで、臨機応変にライブをこなすことになった。それが発展して、CDも出したんだ」
 誰だ?否定したのは?ガンはフリップの愛弟子だし、ブリューもたぶんフリップと馬があってそうだし、レビンはむしろ「ライブをやりたい」っぽいし、パットは若僧でまだ発言力少ないだろうし。となるとやっぱりビルなのか。「ああ、そういえば俺、1999年9月までスケジュール詰まってるわ」なんて言われたらフリップさんも流石に堪忍袋の緒が切れて、ばらばらに行動せざるを得なくなるでしょう。クリムゾン本体が活動しないのも困るけど、ビルが抜けるのはもっと困る。その辺りをビルも知っていて横暴を働くのかも?勝手な妄想が暴走しましたが。

「近くメンバーに新たな提案を試みるつもり。その結果次第だ」

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