物騒な邦題、不気味なジャケット。デスメタルを連想しそう。決してそんな恐い物ではありません。どちらかというと陽気なロックンロールに近い性質のアルバム。'72年に
King Crimsonを脱退したシンフィールドが作詞で参加している。
「Brain Salad Surgery(脳・サラダ・外科手術)」はELPの最高傑作に上げられる一枚。レコード片面に収まらない超大作「Karn Evil 9 / 悪の教典9」を聴けば納得感服気絶悶絶。
個人的評価は☆☆☆☆☆(五つ星)。
恐怖のスーパートリオ
EmersonさんLakeさんPalmerさん3人のロック・トリオです。ギターレスの変則形態ですが、ギターを駆使した並のバンド以上のロックを聞かせてくれます。よく言われることですが、この3人の強烈な個性とすさまじいまでの自己主張が最大の特徴。全員が目立とう目立とうと必死です。ミキサー室で3人が一斉に自分のパートの音量を上げたという伝説はその筋では超有名な挿話。
Vocal,BaseはGreg Lake。King Crimsonで「In The Court Of The Crimson King」「In The Wake Of Poseidon」の2作を発表後脱退しELPを結成。わたくし、ベース演奏に関する味覚が遅れておりますので彼の演奏に関する注釈は入れられませんが、上手いと思います、無責任にも。歌も上手いです、はい。クリムゾンの頃より明らかに。何故でしょう。書く曲は、普通です。叙情的な曲が好きな様子。でも何だかフォークみたい。
Drum, PercussionはPalmerさん。ドラムの教則本を読むと必ず悪い見本として名が登場します。曰く「これを守らないとカール・パーマーのようなドタバタになってしまう」と。そこがいいのにね。元々ジャズ的な人だったらしく、シンコペーションたっぷりで手数の多いジャズのドラミングを腕力で強引にロックに適応したような叩き方をする。そこがいいのにな。80年代、Led Zeppelinの再結成に関する噂話にも度々登場したが、元King CrimsonのJohn Wetton・元YesのSteve Howe, Geoff DownsとASIAを結成してそれを否定した。
そしてEmersonさん。ELPに思想的指導者はいなくとも、音楽的黒幕はこいつ。ロック部門世界最高の鍵盤奏者。技巧も音楽性も他の如何なる鍵盤奏者の追随を許さない。ジャズ・フュージョン畑のチック・コリアと並び称されたとかされなかったとか。このアルバムでも、現代音楽を編曲したり、ホンキー・トンク/ブギ・ウギを披露したり、痺れるほど格好良いハモンド・オルガンのソロを弾きまくったり、ジャズ的ピアノを大熱演したりと懐の広さと深さをインスタントアイドル並に惜しげもなく披露。聞けば納得感服気絶悶絶。